「皆様方には死んでいただきます」
Way of the Killing


第一部   殺しの仲間2



 どうしたらいいの。
 今度こそ、誰かを殺さなければ。
 ヒトコは胸を連打するほど苦悶した。
 ああ、倉持黄金……。
 今となっては、悔いるしかない。
 はじめからあの人を殺しておけばよかった。一石二鳥というもので、すみやかに問題解決だったのに。

 ほんとに、どうしよう?
 お祖父さまったら。
 やるわ。
 絶対、やるわ。
 わたしのお友達の命を奪う。
 そうだ。
 お祖父さまに手をかけられないよう、お友達のそばに付きっきりでいよう。
 残念だけど、ヒトコではまだ、お祖父さまにかなわない。
 でも、お祖父さまの仕業を止めることなら。
 いよいよとなったら、お友達を背に、お祖父さまの前に立ちふさがって頼むのだ。

 さっそく、スマホする。
「あ、ナミエ。今夜、あなたの部屋に泊まってもいい?」
「いいけど……」
 怪訝そうな声。
 無理もない。
 親しき仲にも手順あり。行っても、すぐには泊まれない。しかし今は……。

 街へ出た。
 ヒトコも都会の雑踏の中では、若い身をシックに装って大人ぶる小娘にすぎない。
 ただし、普通より身体的魅力に恵まれたせいか、異性や同年代の女性の目を引き付け、振り返らせる回数は多かったが。
 舗石の上を歩きながら多様な人とすれ違う都度、ヒトコは思う。
 この人は、どうやって殺すのがいいかしら?
 自分が刺客となって相対す場面が頭に浮かぶのだ。
 いけない。
 ヒトコは邪念を払いのけるように、かぶりを振った。
 無意識のうちに、人それぞれにふさわしい殺し方を当てはめて見るようになった自分に愕然となる。
 いつから?
 ジジイから教わった殺道を歩む者の処世術――人と会ったら挨拶より先に、的確な殺し方を憶測する――がすっかり板についてしまった。
 これじゃ……。
 自分は殺しの道から抜けられるだろうか?
 いえ、大丈夫(キリッ
 愛があるから。
 あたしには、お祖父さまがとうに失ったもの、愛と友情の絆で多くの人とつながってるんだもの。



( 続く )




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