たまたま日本に生まれて……



「おいらは、たまたま日本に生まれただけさ。まして戦後育ちなんだから、戦争責任も、謝罪の義務もない。偉い人も云ってるけど、いつまでも自虐史観にとらわれてるなんて異常じゃないの?」


「たまたま日本に生まれた」ことにより、どれだけの恩恵を受けられたか考えてみましょう。
六十年も戦争をしなかった平和な社会での人生、湯川秀樹や黒澤明、イチローがもたらす栄誉、そして世界有数の経済大国から受けられる社会保障……これらはすべて、あなたのものです。

先代の構築した社会のおかげであなたが成り立った以上、その社会の負債も同時に引き受けるのが当然とは思いませんか?
そんな道理もわからないほど子供なのですか?

あなたが生まれる前に先代が築いた富を平気で受け取りながら、先代がこしらえた借財のほうは「生まれてなかったから」と突っぱねるつもりでしょうか?
そんな言い訳が世界の中で通ると思いますか?

自分の国の良い面も悪い面も等しく、自己の関わる責任範囲として受け止めるのが一人前の国民というものでしょう?
それなのに、「日本はこんなガキばかり」と思われかねない言い草で国の評判を地に落とすような人には日本に居てもらいたくありませんね。

しかし、「自虐史観なんて」と呪文を唱えるだけで一切の責務から逃れられるとは便利な時代になりました。
そういう状況をまさに、「異常」と呼ぶんですよ。



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