スウェーデンに学べなかった明治人




日露戦争の経験は日本国家にとって、避けえない運命だったのだろうか?
実際、朝鮮半島を取られたら日本の死命にかかわった、
さらにあの時代、産業国家として脱皮するには商品を売りさばく独占市場が不可欠だった、
などと云う人達で一派を形成しているわけだが……。


ひるがえって、スウェーデンはどうか?
ロシアとの戦争に敗れ、フィンランドを奪われることで、長大な国境線が地続きで隣り合わせになるという状況は、
日本が朝鮮半島に踏みいったツァーリの軍隊と日本海を挟んで対峙するよりずっと由々しき事態だったはずだ。
それが結局、スウェーデンの独立を脅かすことにならなかったのと同様、
朝鮮がロシアに併呑された仮定をもって、日本国家存亡の瀬戸際と捉えるのはあまりにも短絡であろう。
(これは実際、「ロシアにノルウェーまで進出されれば北海が脅かされる。今のうち英国は、
スカンジナビアに出兵してロシアを退けるべし。さもないと国が滅びる」と弁じるに等しい。)


そのうえスウェーデンは、海外植民地なしで産業革命を軌道に乗せた立憲君主国なのだ。
日本のような持たざる後発国にとって良い手本となりえたはずであり、
勇気ある決断によって、同様の選択肢を選ぶこともできなくはなかったろう。


にもかかわらず、明治国家は単独で、それこそ国を滅ぼしかねない大戦争にのめり込んでいく。
要するに、日本は帝国でありたいから帝国としての道を歩んだのである。
ロシアの脅威論は自己の選び取った植民地主義を正当化する理由付けにすぎない。


日本には、英国やプロシアの真似だけでなく、スウェーデンの真似もして欲しかった。




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