靖国



 小泉首相は八月十三日午後、内外の反発の声をものともせず、靖国神社を不意打ちのようにして参拝。
 すくなくとも同調する人々からは立派な行為と讃えられているようだ。

 しかし、戦争犠牲者を心から哀悼するための靖国詣でだったとはどうしても思えない。
 いまはお盆だから、郷里のために死んだ英霊ならみんな里帰りして、靖国はもぬけの殻のはずなのに。

 お盆は、今日で終わる。
 仏教のしきたりにならい郷里に戻っていた「英霊」たちは、今度は神道のならわしに従い、東京の靖国へと戻っていく(日本人だねえ)。

 小泉首相は、その靖国を終戦記念日の八月十五日に参拝することに、何ヵ月も前から公約までしてこだわっていた。
 神社に祭られた魂がすべて里帰りしている、まさにその時に「戦没者たちを弔う」ことにだ。

 結果的に十三日に繰り上げられた参拝が、犠牲者追悼とは別の動機をもっていた、なによりの証拠であろう。
 彼はあくまでも、「日本の首相が西暦2001年の終戦の日に靖国詣でをした」という事実を、自身の行動によってつくりたかったのに違いない。

 それにしても、小泉首相って。
 紀元2001年の終戦の日に靖国詣でをしたという「功績」だけで終わってしまう人なのだろうか?



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