「絵師の落日」


有象無象のネット絵師らに引導を渡すのは、
「AI絵師」でもなければAIツールでもない。


この挿絵は描画メーカー「NovelAI」で制作されたものです。



ツイッター・ジャパンの圏内では。
ネット右翼と変わらぬ心根の者が、「AI絵師を自称する連中は描画ツールが出力しただけのものを自分の作品と言い張る。奴らの使うAIツールはネット中から無断で集めた画像を切り貼りし一枚の絵に仕立てるだけ」と罵り、煽りたてる事実上のヘイトスピーチが騒音となってかまびすしい。

AppleやGoogleやphotoshopがユーザーの利便のため描画AIを採用するご時勢なのに、こんなことで騒ぎをおこすという日本だけの珍現象。

この手のAI画叩きは、twitterで周期的におこる暴動みたいなものだろう。
あることないこと吹聴してお絵描きクラスタにAI作画を敵視させる、そういう魂胆らしいが。
ほんとうに多数派の声なのか、そもそも手描き絵師が主体となっているのかは大いに疑わしい。
手で絵を描く人なら作画に忙しく、旧2ちゃん流のAI叩き祭りに参加する、それほどヒマなわけがないからだ。

したがって、アナログな画材で絵を描く人、いわゆる手描き派を相手にしているとは思わないのだが。
とりあえずのところ。
AIツールに描かせる人をひたすら敵視、昔の2ちゃんねらのように(まさに2ちゃんねらだ。言うことなすことの低劣ぶり、既視感があり過ぎる)騒ぎたてる面々を、ここでは「ネット絵師」としておこう。
以前からアニメなど二次元愛好者とネトウヨとは親和性が高い傾向があったので、お絵描きアカウントに強烈なバカウヨがいたとしても、なんら驚くことではない。

彼らネット右翼……もとい、ネット絵師らは、問題の勘所から(おそらく意図的に)目をそらそうとする。
ネトウヨならぬネトエシらはのたまう(書き出しと重なるが)。
「絵も描けない奴らがAIツールに描かせたものを自分の作品と言い張り、恥知らずにも「AI絵師」と自称している」「AI作画ツールはネット中から無断で集めた画像を切り貼りし一枚の絵に仕立てるだけ」……。
その言い分たるや、ネトウヨの常套句「在日コリアンの五人に一人が生活保護」「人口20万の都市で30万も殺せない」「慰安婦は高給取り」等とおなじで、実にくだらないものばかりなのだ。

現状を高みから俯瞰するだけでわかるはずだが。
いわゆる「AI絵師」なる実在するかも定かでないものがネット絵師らの領分を侵そうとするわけではない。
幻想の中で敵視されるものは脅威となり得ない。
問題の本質は。
これまでネット絵師らの作品(ほとんどは金を取って見せるスケベ画)を有難がってきた無数の人たちが、AIツールの魅力に捉われることで誰にでも水準以上の出来の人物造型が出来るとわかり、ちょっとやそっとの手描き絵では見向きもされなくなるところにある。

有象無象のネット絵師らに引導を渡すのは、「AI絵師」でもなければAIツールでもない。
大勢の一般人が個々の立場から、すなわち社会そのものがAI作画を選び取ることによって淘汰されてしまうのだ。
(冷蔵庫の普及で氷屋が消え、電卓の登場でソロバンが駆逐されたように)
それこそ、今まさに起きようとすることである。

ネット絵師らは現実をこそ直視すべきだ。
そうしないと生き延びられまい。
これまでの精進を無駄にしたくない気持ち、わからんでもないが。
筆やタブレットばかりかAIツールも使いこなさねばならない。
でなければ結局、すべての努力がそっくり無駄になってしまう。

自分は何十年も前に、「新世紀大学未来予測講座」の中で、ひっそりと書いている。
『即席麺が市場を席巻した今日、いまだにどこの横丁でもラーメン屋は営業している。本当に美味しい味のものを提供しつづけるならば、生き残ることは可能であろう。』
(一部修正)

ようはデジタル時代になろうと、「絵師」に生きる道が閉ざされるわけでないこと。
(客に飽きられ、倒産するラーメン屋は実に多いが。責をカップ麺には負わせられまい)

ネット絵師の中には、「描画ツールにかなわないだけで、AI絵師に負けたとはまるで思わない」と強がる人もいる。
(「AI絵師」など、手描き派の敵視幻想の中にしか存在しないのは別件で述べた。そもそも存在しない相手に勝ちも負けもできはしない)
結局この人は、技術進歩を拒み、昔ながらの手描き絵にこだわる俺カッコいいと酔いたいだけらしいが。
西部劇で、銃弾を高速で連射する機関銃を誇示する武器商人に、ジョージ=アームストロング・カスターが「こんなのは戦争じゃない」と食ってかかる場面が思い合わされた。
実際に機関銃を、「行軍の足手まといだ」と砦に送り返したカスターが遠征先でどうなったかといえば……。

結論。
以前とまた、同じことを書くしかない。
絵師は吠える。
されど、デジタルは進む。


これだけでは変わり映えしないので。
今度は、スペインのことわざを付け加えたい。
「世の中は海に似ている。泳げない者は溺れる」
そして世の中は、今のツイッター・ジャパンを仕切る頭がボケながら悪意だけは鮮鋭な者の権限の範囲よりもずっと広いのである。


付録
AI作画ツールにまかせれば、この水準の画像をほんの二、三秒で生成してもらえる。誰にでも、平等に。
(描画の指示文にこだわるなら、さらに画質は高まる)
細部に修正の要はあるにせよ、そうした不備も早暁、ツール自体の進化で解消されるだろう。
一枚の作画・彩色に何時間もかける手描き派が脅威に思う由縁だ。





( 終 )




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