「南京1937」



 図書館の視聴覚室で、レーザー・ディスクの「南京1937」を拝観する。
 川崎での上映会は妨害を受けたことだし、ビデオ・ショップやテレビ放映でお目にかかる期待も持てないようなので、ここで見ておかないと見る機会はなさそうだから。

 なるほど。右翼どもを激怒させる場面が続出の痛快作といったら、不謹慎だろうか。
 ともあれ、この期におよびながら、映画で描かれたことは事実か否かを問題にし続ける人々は思い切りが悪いと思うのだ。

 いわゆる「南京屠殺」は伝説かもしれないが、日中戦争の象徴譚として捉えられる伝説であり、後世の日本人がいくら「南京では」虐殺などなかったとわめいたところで、日本が中国大陸に大規模な派兵をおこない、軍民に甚大な惨害をあたえたという、より巨大な事実までをもみ消せない以上、どうなるものでもあるまい。

 疑いもなく日本は、侵略国の立場で軍に南京を攻略させ、占領下に置いたのだから。
 この行為においてすでに、虐殺を云々する以前の罪業であろう。

 中国では現在、さらに大きなスケールで仕組む南京ものが企画されていると聞くが、つくり手たちは間違いなく、「シンドラーのリスト」と「タイタニック」を合わせたような、惨劇と感動を売り物にする超大作として撮り上げ、日本よりもはるかに大きな国際市場に訴える気でいるのだろう。

 そのほうが賢明である。



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