責任の比率



『無謀の戦争を発起したのはわずか一パーセントの軍閥首脳部であり、将兵の九割九分は、ただ命令を奉じて異境の戦場に出征し、そこで国民の名誉を賭けて戦い、そうしてじつに、百四十三万九千人が命を捨てたのである。』(PHP社『スーパー・ディベート術』より)

 説得術を指南する本からの引用だが、かく申すは詭弁なり。

 理性ある国民が三割しかおらず、七割の狂熱的な連中に押し切られたというのならともかく、なんと百人中九十九人が善良でまともな人々でありながら、あと一人の軍国主義者によって悪い方向へ引きずられたのだと主張する人が、本気でだれかを説得しようとしているとは到底信じられない。

 戦争発起者が全体の一パーセントしかいないのなら、なぜ残りの九十九パーセントが生命を賭けてまでその命令に従う必要があったのか?
 考えられる理由はただ一つ。

 九十九パーセントの精神状態が一パーセントによる命令の中身と同調しあっていたからにほかならない。



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