センノベ案に同感。しかし――
(邦画余話)




>出演者に、日本人を使わない。ロケ地にも、日本を使わない。セリフは英語にする。監督は、アメリカ人にまかせる。以上を実行すれば、邦画は世界で受け入れられる。

 まさにその通りです!
 自分も、日本映画産業を立ち直らせる最終的な良案はそれしかないと考えていました。
 すこしも非現実的な企図ではありません。
 現に、ディノ・ラウレンティスやカルロ・ポンティなど、イタリアの大物製作者は、そうやって世界的ヒット作を生み出してきたのですから。

 実は……日本の映画人も、おっしゃる通りのことをすでにやってはいます。
 ただ、うまくいっていないのです。

 そのようにして撮られた映画には、「ベルサイユの薔薇」や「エデンの海」などがありますが、海外ではまるで注目されませんでした。
 角川も、「ルビー・カイロ」や「始皇帝暗殺」で失敗しました。
 オスカーを得た「ビューティフル・ファミリー」のほか、「親子ネズミの冒険」、「戦場の小さな天使たち」などを連打したサンリオも、結局、映画事業から撤退するハメになりました。
 NHKエンタープライズなどは、SF巨編一作のみで映画の製作を打ち切ってしまいました。
 極めつけは、ハリウッドの大会社を買収して北米市場へ乗り出したソニーで、責任者の人選を誤ったとはいえ不調続きの業績により、被った損失が二十億ドルといわれています。

 かくのごとく、世界に雄飛しての映画づくりに挑んだ人たちは、軒並み討ち死にしている有様なので、いかに妥当な解決策とはいえ、日本映画人がことをうまく運ぶには、商売人としていま少しの習熟が求められると言わざるを得ないでしょう。