観客も映画づくりに参加しているのです
(邦画余話)




 監督は人を意のままに操りたがり、俳優は人前に自分を出したがり、製作者は取引先との商談を好む……仕事が人を造るものだとしたら、全般的にそういう傾向があることはたしかなようです。
 では映画は、監督のものか? 俳優のものか? スタジオのものか?
 いえ。観客のものだと当サイト管理人は思います。
 映画をつくるのが映画作家ですが、その作家とは監督だけでなく、製作者、脚本家、原作者、カメラマン、編集者、デザイナー、作曲家、演技者……映画のため創造性を出し合うあらゆる専門家のことであり、映画は間違いなく、彼らあっての総合芸術です。
 しかもそれは、地上でもっとも創造に資金が必要な芸術なのです。
 その作品を味わうため時間をつぶす無数の人々が払う入場料を見込んでつくられる芸術。
 小説や絵画、工芸と異なり、こんなにも大勢の人から支持を受けなければ存立できなくなる芸術品はほかにありません。
 映画を観にくる人々も創造に参加しているのです。
 日本の観客が日本の映画を見捨てることで引き起こされた危機的状況の中、だれが邦画の主人なのかをあらためて考えさせられます。