低迷する経済成長にもかかわらず、技術面での勝利の成果がこのまま蓄積していけば、2010年頃に世界は、大いなる跳躍を迫られるようになるだろう。
量子工学、遺伝子工学、核融合……人類はいよいよ、これまでに成し遂げた発明のすべてが前座にすぎなかったと思えるほどの創造の新境地へ踏み入っていく。
それ以前とそれ以後とは、まるで別々の時代として区分されるのだ。
2010年までに、体内治療用マイクロマシン、ハイブリッド臓器、自動操縦車、バーチャル・リアリティ・ゲーム、電子ノート、音声通訳機等のこまごまとしたものは、あらかた実用化されると考えて差し支えない(普及までするかわからないが)。
ヒト・ゲノムの読解もほとんど(あるいは完全に)終了していることだろう。
これによって得られる恩恵には測り知れないものがある。
家畜細胞の培養技術が食肉を安値で大量に供給できる水準に達し、ゴー・サインを取り付ければ、まさに食糧革命を引き起こす。
世界が食糧難民のため解決すべきことは、流通にまつわる不手際の一点だけとなるかもしれない。
筆者は、核融合に関しては、その実現が百年遅れたとしても不安には思わない。
二十一世紀の人々が必要とするエネルギーは、太陽熱、海洋熱、風力、地熱などで十分まかなえるようになるはずだし、悲観論者が警告するように、本当に地球が温暖化するのだったら、なおさらのこと(笑)。
重要度においてトップ・クラスなのは、ナノテクノロジーすなわち量子工学の進歩により分子や原子の配列を自在にする技術がもたらすLSIの超小型化だ。
低価格の人間型コンピューターが万人のため働き、人類の未来図がそれらしいものとなり得るかは、このナノテクノロジーの進捗の成果にかかっている。
さらに精密なマイクロ・マシンの製造や「倍テクノロジー」すなわちフォン=ノイマン・マシンの実用化についてもしかり。
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